2)酸化物ヘテロ構造を用いた新機能の開発

界面ダイポールによる酸化物ヘテロ接合の界面エンジニアリング
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ペロブスカイト型酸化物は、構成する元素の組み合わせによって、金属・絶縁体、強磁性や強誘電性、さらには高温超伝導体などの多彩な機能を発現します。これらの機能を組み合わせると、これまでにない新たなデバイスを実現することができます。そのようなデバイス応用における重要な技術として、界面のバンドアライメント制御が挙げられます。左図に示した例は、巨大磁気抵抗素子としての応用が期待される、ハーフメタルLa0.6Sr0.4MnO3と絶縁体SrTiO3とのヘテロ界面のバンドアライメント制御(=界面エンジニアリング)の例です。界面の終端構造をわずか1原子層変えるだけで、トンネル障壁高さが大きく変わることがわかります。これは、光電子分光測定を行うことで初めて見られた現象です。このような変化は、極性酸化物と無極性酸化物の組み合わせのみで観測され、無極性酸化物同士の界面では生じないことがわかりました。つまり、界面の極性不連続性に起因する界面ダイポールを利用した障壁高さ変調を実験的に明らかにしたことになります。この技術は、構成する材料を変えることなく界面物性を制御できる手法として、デバイスを設計する上で非常に重要な手法です。

関係する主な論文:Appl. Phys. Lett. 90, 132123 (2007), Phys. Rev. B 81, 235322 (2010), Phys. Rev. B 85, 165108 (2012).


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上記の研究から見出した知見を利用すると、例えばSrRuO3/Nb:SrTiO3ヘテロ接合におけるダイオード特性を大きく変えることができます。左図は極性酸化物LaAlO3を挿入した場合の電流ー電圧特性の結果です。挿入した層の厚さの違いに対応して、ダイオード特性がショットキー的な整流性からオーミック特性に変わっている様子がわかります。
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このような界面ダイポールによる特性制御は、正負の層から構成されるペロブスカイト酸化物の挿入だけではなく、イオン電荷を持った単原子層の挿入でも達成することができます。右図は、さきほどと同様のSrRuO3/Nb:SrTiO3ヘテロ接合界面に、正のイオン電荷として(LaO)+単原子層を、負のイオン電荷として(AlO2)-層を挿入した場合に予想されるバンドダイアグラムの変化です。挿入したイオン電荷を遮蔽するために、金属(この場合はSrRuO3層)側に遮蔽電荷が発生します。この遮蔽電荷と挿入したイオン電荷とが界面電気二重層(界面ダイポール層)を形成することで、界面のバンドオフセットが変調すると考えられます。
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そこで、半導体-金属接合面の一層を正または負の電荷を持つ層に置き換え、特性を評価したところ設計通りにバンドオフセットが変調していることが分かりました。さらに光電子分光測定で詳細に調べたところ、その変調幅は1.7 eVにも及ぶことがわかりました(上図)。この値は、半導体層として用いたNb:SrTiO3のバンドギャップの半分以上の大きさにも及び、これまでにシリコンや有機物を用いた例で報告されてきた界面ダイポールの値よりもはるかに大きな値を示しました。この手法は界面をわずか一層変化させるという点で、他の物質にも容易に応用でき、広い波及効果が期待されます。

関係する主な論文:Nano Lett. 15, 1622 (2015), Nat. Commun. 6, 6759 (2015).
リンク:物構研トピックス(2015.04.10)「半導体接合界面バンドオフセットの任意制御に成功」